修理にはじっくりお客様のお話を聞く必要があると考えてます

先日、お客様から不具合の入庫の問い合わせがありました。

お車が調子悪くなることは一定の確率で起きます

自動車に限らず、モノは使い続けると少しずつ状態が変わってきますよね、毎日毎日のように変化するものもあれば、一か月単位でとか、一年単位でとか、いろいろですが症状として感じるまではいろいろな過程を経るはずです。

 

先日感じたことはまさに「じっくりお話を聞く重要性」に気づかされた一件でした。

結果から申しますと、三回目の入庫で直りました。

どんな不具合も整備士であれば一発修理を目指すべきでしょうけど、今回は事情がありました。

その事情のお話の前に、

今回の不具合のお申し出は

「エンジンからの異音」

ニャーニャー音がする。というもの。

車両は ホンダ CR-V DBA-RE4

実力のある整備士であれば、この申し出でかなり絞り込めますね。はい僕もそうです。

パワステポンプ、ステアリングラック、パワステベルト、補機ベアリング

そのあたりを疑うべきでしょうね。

でも困ったのはここからです。

症状がでない

疑いのある箇所はわかっていても、不具合がでなければ診断のしようがありません。

ここで一発修理を狙って、経験や情報のみで部品交換の提案をするのは、ぼくのやり方じゃないです

たしかに何度も入庫していただくのは、お客様にとっても負担だし工場にとっては一発で修理できたほうが信頼につながるかもしれないけど、

直らなかったら元も子もなくないですか?

しかも、直らなかったとしてもその経費はお客様持ちですよね。

なんでもなかった修理にお金を払っていただくのはいかがなものでしょうか?

もちろん、経験や情報で修理することもありますが不具合を確認できていればの話です。

今回はこの時点で不具合の確認はできていませんでしたし、優先するべきは不具合の確認ですね。

でも不具合を確認できない、2,3時間試運転しても症状がでない。

そういう時はお客様に聞くべきです。

ヒントはお客様が与えてくれます。

「どのような時に不具合がでますか?」

なんて聞いても具体的に答えられるお客さまなんていませんよね

それだったら

「何をしてる時に気づきましたか?」

って聞いたほうがお客様も答えやすいと思うんです。

このお客様は

「市内でアパートを探している時になるんだ。しかも大町あたりで」

このお答えで、すごく重要なことがわかりました。

・アパートを探しているということは相当ゆっくりでハンドル操作を繰り返しているということ

・大町付近は道が複雑でハンドル操作を相当しないと街なかを走れない

ということがわかりました。非常に有益な情報です。なぜアパートを探されているかはクルマには関係ありませんが笑、それはお客さまのプライベートですから

状況がわかれば再現するまでです。

お客様の運転で試運転に行きます。実際に大町付近まで同乗します。

「たしかここの物件がいいなぁと思ってた時だったんだよなぁ」とお客様

すると

ニャーニャーニャー

でた!ねこみたいな音!

これかぁ!確かにしますね。しかも一度鳴り出すと止まらない。

これはパワステ関係の音ですね。

戻って工場に入庫、点検すると

パワステオイルが泡立っております。量はど適正です。

僕の診断結果は

ポンプ部で何らかの原因でエア混ざる要因あり

ステアリングポンプ異常

ステアリングラックにもオイルのにじみがあることからエア混入する可能性あり

ステアリングラック異常

です。この二つを交換すれば解消されますね。

という診断です。さすがは僕です

お見積りを作成して、提案です。パワステポンプ3万円、パワステラック交換6万円。。。

するとお客様

あんまり経費かけたくないんだよね

なるほど、アパートをお探しのようなので何かと物入りでしょうから

わかります!

それで僕は考えました。

そもそも泡の発生が音の原因です。

泡の発生を抑えることができれば改善するかもしれません。

可能性は低いですがお客様のことを考えると提案に順番をつけたほうが良さそうですね。

僕の提案は

1 泡の発生を抑える消泡剤を入れる

2 改善が見られなかったら中古のパーツでの修理を提案する

3 中古がなかったら新品でのパーツ交換を提案する

ということを考えました。

消泡剤とは、

ペットボトルのウーロン茶を思いっきり振ると泡がたちますよね、その泡はやがて消えます。オイルの大事な性能はこの泡の消えるスピードです。一瞬で泡が消える性能を回復させるのが「消泡剤」です。

今回の整備で使ったのが、

ワコーズパワーシールドです

 

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オイル漏れの改善や機密の回復など本来の目的ですが、消泡効果も期待できます。

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パワステオイルのリザーバータンク自体がストレーナー(フィルター)になっているので

取り外してきれいにします。

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左が抜き取ったオイル 右がワコーズパワーシールド

規定の量を補充します。

 

今回の整備の提案はすぐに結果を感じることはできません。循環させて走ってなじませる必要があります。

ここまでの入庫が三回にわたってしまいました。

一週間後、一か月後、お客様に調子をお伺いしたところ、「良好」とのお言葉を頂戴しました。

再発するかもしれないし、しないかもしれないけど、それでも経費を抑えるというお客様のご要望にお応えすることができた喜びと、

やっぱり「お客様のお話をじっくり聞く」という重要性に気づかされた案件でした。